NHK新潟ラジオ「朝の随想」より

第20回  食を通して日韓交流


 新潟から飛行機に乗って僅か二時間でお隣の国、韓国はソウルのインチョン空港に到着します。まるで東京に行くような身近さで訪れるソウルは、東京に負けないくらいエネルギッシュな街です。韓国というと、焼肉を食べアルコール度数の高い酒をくっと飲む、という熱血なイメージが強いのですが、実はこの都市で最近、和食が人気です。


 ソウルでは、以前より「日式」と言われる韓国風にアレンジした日本料理の店がたくさんありました。こういった店では刺身にコチジャンが付いてきたり、天ぷらのような唐揚げだったりと、なかなかユニークな創作料理が出てきて、しばし言葉を失ったものです。


 それがここ数年、「とんかつ」や「おでんバー」などのブームを経て、最近は日本人調理師による本格和食や居酒屋が増え始め、どこも韓国人のお客さんで賑わっています。私が先般訪れた居酒屋では、日本酒のボトルを数本開けて宴たけなわの会社員のグループに遭遇しました。また、続いて入ってきた韓国人のカップルは、日本語の練習なのでしょうか、注文も会話もずっと日本語で話していました。きっと、この店の常連さんは、日本に行った、いえ住んだことがあるのだろうと思えるくらい、こちらのスタイルが板に付いていて、日本にいるような錯覚すら覚えたものです。


 こういった本格和食や居酒屋の増加に伴い、それまで高級ホテルでしか飲めなかった日本の地酒、そして新潟の地酒も多く見られるようになっています。さらに食材に関しても高級食材や本場の食材を求める声が出始めています。
 

 これは年間400万人が日韓を往来する時代となり、仕事や留学、旅行などで日本への渡航経験がある韓国人が相当な数になってきたこと。また、韓国の経済発展には目を見張るものがあり、その状況を背景に昨今の日本同様、韓国の方々も「本物志向」が強くなってきているということでしょうか。

 

 


*ソウル市内の本格居酒屋

 2002年のワールドカップ日韓共催から四年。政治の分野では、今後の関係を憂慮する声が少なくないようです。しかし、文化の面では一連の韓流ブーム、さらには韓国での和食人気など確実に日韓の交流は進んでいます。
 

 新潟は環日本海の中核都市を目指しています。
 2008年にはサミットも誘致しようということです。
 新潟清酒、そして新潟の食文化を通して少しでも日韓の交流、友好に寄与できれば幸いです。新潟は韓国の隣人なのですから。

 

2006.8.17NHKラジオ「朝の随想」
尾畑酒造株式会社
尾畑留美子